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成年後見制度にかかる費用| 法定後見制度と任意後見制度の申立手数料や報酬について

判断能力に不安のある方でも、成年後見制度を活用することで、財産も守ることができます。しかし法的な保護を受けるにあたり費用も発生します。制度の利用開始時にかかる費用、その後の運用にあたりかかる費用などがあります。

当記事ではこの費用について、法定後見制度と任意後見制度に分けて紹介します。

 

 

法定後見制度の利用にかかる費用

法定後見制度は、本人の判断能力が低下した後に利用する成年後見制度のことです。判断能力の状態に応じて後見人・保佐人・補助人のいずれかが選任され、本人を支援することになります。

これらの人物は、申立を受けた家庭裁判所により選任されます。

申立時には手数料が必要で、法定後見が開始されてから後見事務を遂行する後見人等に対する報酬も発生します。

 

申立手続のときに必要な費用

申立手続で必要となる費用を下表にまとめます。

法定後見制度の申立で必要な費用

金額

診断書作成費用

約1万円
申立の手数料

800円

代理権、同意権付与の申立手数料

800円
郵便料

数千円ほど

鑑定費用

5~10万円

※鑑定費用については家庭裁判所が必要とした場合に限り発生。申立時に納めるケースが多い。

診断書の作成費用のほか、申立にあたり戸籍謄本や住民票、登記されていないことの証明書などを取得しておかないといけません。そのため各種書類の取得費用として、1通あたり数百円ほどは費用が発生します。

また、後見や保佐、補助の開始にあたり制度に関する相談を専門家に行うことも多いです。相談にとどまらず各種書類の準備や申立作業などもサポートできますので、依頼した範囲に応じた、専門家への報酬も費用として発生します。

この報酬は依頼先の法律事務所、司法書士事務所などにより異なります。

相場としては「10万円~」となることが多いのですが、具体的な金額は本人の財産の額の影響も受けます。また、料金体系も事務所によりさまざまで、着手金が割合多いケースもあります。このときは依頼したタイミングで費用の準備が必要となります。

 

後見等が開始した後で必要な費用

成年後見人、保佐人、補助人がついてからも後見費用として「報酬の支払い」が必要です。

前項で説明した申立費用は1回きりの費用であり、大きな問題とならないことが多いです。それに対して後見費用はその後も継続的に発生し続けますので、申立人等はこちらの費用についてよく理解しておく必要があります。

費用の支出元は通常「本人の財産」です。

家庭裁判所が具体的な金額を定めるのですが、「月額2万円前後」が相場とされています。ただし、本人の財産状況が相当に複雑であるなど、特段の事情がある場合はより大きな金額が設定されやすいです。

また、この後見報酬に加えて実費も発生します。後見等の事務を遂行する際、交通費や切手代などが必要になることもありますので、それらに要した金額も「本人の財産」から支出することとなります。

 

任意後見制度の利用にかかる費用

次に、任意後見制度についてですが、こちらは本人が任意後見人となる人物と契約を交わすことからスタートします。そのため、少なくとも任意後見契約を交わすのに不足しない判断能力は備わっていないといけません。

 

任意後見契約締結のときに必要な費用

任意後見を始めるには、任意後見契約書を公正証書として作成しておく必要があります。これは法的な義務であり、公正証書の作成を省略して任意後見を始めることはできません。

公正証書は公証役場にて、公証人に作成をしてもらいます。そのため公証人に対して手数料の支払い等が必要です。

任意後見契約でかかる費用

金額

公証人手数料

11,000円

登記嘱託料

1,400円

印紙代

2,600円

郵便料

540円

正本謄本の取得

250円

※生前事務の委任契約を交わす場合、公証人手数料は増える。
※公証人に出張してもらう場合、数万円ほど費用は増える。

その他準備書類として、本人の住民票取得に200円~300円。本人の戸籍取得に450円。本人の印鑑登録証明書の取得に300円が発生します。

また、任意後見契約を交わす場面でも専門家を利用するのが一般的です。

法的な問題、紛争が起こらないように契約書に記載する条項を考えなくてはなりませんし、専門的知見が必要ですので弁護士や司法書士などに依頼して対応します。また、専門家に後見人になってもらうこともあります。そのときにも依頼費用が発生します。

法定後見制度を利用するときと同じく、専門家の支払う報酬は依頼先により異なります。

相場は「5~20万円ほど」と考えられていますが、当然、依頼する範囲により異なります。契約書の作成だけであれば安く済みますし、後見人を頼む場合や財産の金額が大きい場合などには比較的報酬も高くなるでしょう。

 

任意後見が開始した後で必要な費用

任意後見では、任意後見人はもちろん、任意後見監督人も必須です。任意後見監督人が選任されてからでなければ任意後見は始められず、報酬も継続的に発生します。

 

任意後見契開始後の費用

金額

任意後見人に対する報酬

月々3~5万円

任意後見事務で生じる実費

任意後見監督人に対する報酬

月々1~3万円

※実費として、各種書類の取得費用、郵便切手代、交通費などが発生する。

任意後見人に対して支払う報酬金額は、任意後見契約により定めた金額です。任意後見契約も委任契約の1種であるため、別途定めを置かなければ無報酬となります。

一方、任意後見監督人については家庭裁判所が金額を定めます。本人の財産や監督人の業務内容を鑑みて、そして本人の生活にも配慮して定められます。なお支払い時期は、1年後の後払いになるケースが多いです。

その他にも、委任する内容によって金額が増額されることがあります。例えば「見守り契約」を交わして、自宅に訪問してもらうなどの対応を取ってもらう場合は、追加で年間数万円ほどの費用が発生します。
死亡後にしてもらいたい事務がある場合なども同様です。葬儀やその他手続に対応してもらう分の費用が追加で発生します。

 

任意後見人に対する報酬の設定について

上述の通り、任意後見人に対する報酬は、本人との契約により定めます。法定後見制度における後見人等や任意後見監督人のように、家庭裁判所が定めるものではありません。民法の委任に関する規定が適用されることから、報酬の定めが契約に置かれていないと報酬を受け取ることができないのです。

なお、事務処理上発生した必要経費に関しては、支払いに関する定めを置かなくても本人に対して請求をすることができます。前払いを受けることもできますし、立替払いをして後日償還を受けるといった処理も可能です。

 

月額報酬と年額報酬のどちらでも良い

月々の報酬を定めることも、1年単位での報酬を定めることも、どちらの形式でもかまいません。

支払時期も受領方法も指定がないため、本人に直接請求して受領することもできますし、任意後見人が通帳を預かっており入出金の代理権が付与されているのであれば、自ら報酬を引き出して受領しても問題ありません。

 

定額報酬以外の定め方に注意

「月額〇万円」「年額〇万円」などと定められている分については報酬が明確ですし、実費に関しても実際に支出した分を請求すれば良いです。

しかし、長く成年後見制度を運用していく中で、特に難易度の高い文書作成であるなど、普段より手間や時間を必要とする事務が生ずることもあります。

そんな場合を想定して「○○の業務に対しては1件〇円」あるいは「1時間あたり〇円」などと定めることもできます。

しかしあいまいな記載をすることにより、報酬をめぐってトラブルが生じることもあります。できるだけ公平性が保たれるように定める必要がありますので、契約書を作成するとき、報酬の定めについては慎重に検討を進める必要があります。