認知症などにより自分の判断能力が不十分になった場合に、財産管理や生活を支援するために成年後見制度があります。
この制度には、家庭裁判所が選任する法定後見と、自身で事前に契約する任意後見の2つがあります。
この記事では、法定後見人と任意後見人のもつ権限の違いについて解説いたします。
目次
成年後見制度とは、認知症や知的障害、精神障害などによって本人の判断能力が不十分になった場合に、本人を法的に保護・支援するための制度の総称です。
この制度は、判断能力が不十分な人の財産管理や、医療・介護に関する契約などの身上監護に関する法的行為を支援し、本人が不利益な契約によって財産を失うことを防ぐことを目的としています。
成年後見制度は、本人の判断能力が不十分になった後に利用する法定後見制度と、本人が元気なうちに将来に備えて契約を結んでおく任意後見制度の2つで構成されています。
法定後見人とは、本人の判断能力が不十分になった後、家庭裁判所によって選任される援助者のことです。
家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族などの申立てに基づき、後見人などを選任します。
申立書に候補者を記載することは可能ですが、親族間の利害対立や、財産管理の専門性が必要な場合などには、弁護士、司法書士、社会福祉士といった専門職が選任されることが多くあります。
実際に後見人などに親族が選任されるケースは、全体の2割程です。
任意後見人とは、本人が十分な判断能力を有しているうちに、認知症の悪化など将来判断能力が不十分になった場合に備えて、あらかじめ自ら選んだ人との間で任意後見契約を結んでおく後見人のことです。
任意後見契約は、公正証書によって作成する必要があります。
任意後見人は、家庭裁判所が選任する法定後見制度と異なり、被後見人の意思で選ぶことができます。
契約を締結した後、判断能力が下がったタイミングで家庭裁判所に任意後見監督人の選任を申立てることで、後見が開始されます。
法定後見人と任意後見人は、その権限の範囲や性質において大きな違いがあります。
法定後見人に認められる権限は、後見、保佐、補助という3つの類型によって異なります。
この3類型は、本人の判断能力の程度の違いに応じて適用されます。
特に、法定後見では、本人が後見人等の同意を得ずに行った不利益な法律行為を、後から取り消すことができる取消権が認められます。
この取消権は、任意後見には認められない、法定後見制度の大きな特徴です。
これにより、判断能力が不十分な本人が行う不利益な契約行為から財産を守ることができます。
後見は、本人の判断能力が常に欠けている状態に適用されます。
後見人には、本人の財産管理や法律行為のすべてについて、代理権、同意権のすべてが認められます。
本人の日常的な生活行為を除くすべての法律行為について、後見人に取消権があります。
保佐は、本人の判断能力が著しく不十分な状態に適用されます。
保佐人には、本人が特定の重要な法律行為を行う際に、同意権と取消権が認められますが、行使するには家庭裁判所の審判が必要です。
また、家庭裁判所が認めた特定の行為についてのみ、代理権が付与されます。
本人が不動産の売却や訴訟行為などを行う際には、保佐人の同意が必要です。
補助は、本人の判断能力が不十分な状態に適用されます。
補助人に与えられる権限は、本人の状況に応じて家庭裁判所が決定します。
同意権、取消権、代理権のいずれについても、家庭裁判所が審判で定めた特定の法律行為についてのみ認められます。
本人の残された能力を尊重しつつ、必要な支援だけを行うことが目的です。
任意後見人に認められる権限は、本人が元気なうちに契約で合意した範囲に限定されます。
契約で定められた範囲内で、本人の代わりに法律行為を行う代理権が認められます。
法定後見と異なり、取消権や同意権といった権限はありません。
一方で、任意後見契約では、法定後見では原則禁止されている資産運用や資産管理を、契約内容に含めることが可能です。
これにより、本人の財産形成に関する希望を反映した、柔軟な財産管理を行うことができます。
法定後見では、被後見人の財産が失われかねない積極的な資産運用は行うことができません。
成年後見制度には、家庭裁判所が選任する法定後見と、本人が契約で選任する任意後見があります。
法定後見人は裁判所が選任し、取消権を持ちますが、任意後見人は本人が選び、契約の範囲で代理権を持ちます。
法定後見は、本人の判断能力に応じて後見、保佐、補助に分かれ、本人の判断能力に応じて後見人には同意権や取消権など広範な権限が与えられる一方で、本人の財産をリスクにさらす積極的な資産運用を行うことができません。
任意後見では、取消権や同意権は認められませんが、本人との契約内容を柔軟に定めることができ、柔軟な資産運用などを行うことができます。
後見制度でお困りの際は、ぜひ弁護士にご相談ください。