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配偶者居住権とは?設定するメリットについて解説

相続が発生した際、残された配偶者の住まいの確保は重要な課題です。
特に持ち家に住んでいた場合、その不動産が他の相続人との間で分割対象となると、配偶者が自宅に住み続けられなくなる可能性もあります。
そこで注目されているのが「配偶者居住権」です。
2020年の民法改正により新設されたこの制度は、配偶者の住居を守るための強力な権利です。
本記事では、配偶者居住権の仕組みやメリット、設定時の注意点についてわかりやすく解説します。

 

 

配偶者居住権とは?

配偶者居住権とは、相続が発生した時に配偶者が亡くなった人(被相続人)の所有していた住宅に一定の期間、または一生涯住み続けられる制度で、2020年4月1日に導入されました。
これは、高齢化社会が進む中で、残された配偶者が安心して生活できるようにすることを目的としています。
以前の相続制度では、配偶者が自宅に住み続けるためにその家を相続すると、他の相続人との間で遺産分割の割合に配慮するため他の財産(預貯金など)を相続しにくくなり、生活資金が不足することがありました。
特に、自宅の価値が高い場合には配偶者と他の相続人との間で争いになることも少なくなく、配偶者居住権の導入により、住まいを確保しながら他の財産を分け合うことが可能となり、相続の公平性が保ちやすくなりました。
ただし、この権利は「所有権」とは異なり、あくまで住み続ける権利に限定されるため、建物の売却や賃貸はできません。

 

配偶者居住権の対象

この制度が適用されるには、以下の要件をすべて満たす必要があります。

  • 残された配偶者が被相続人の法律上の配偶者であること
  • 被相続人が亡くなるまで、配偶者がその建物に住んでいたこと
  • 遺産分割協議または遺言によって配偶者居住権が設定されること

配偶者居住権の登記は義務化されていませんが行うべきです。
というのも、遺産分割協議などの取り決めは、あくまで当事者間の合意内容です。
対外的に居住権を主張するには、法務局で登記を行う必要があります。
登記をしないと、売却により不動産の所有者が第三者へ移ってしまった場合に権利を主張できないため、早めの手続きが重要です。

 

配偶者居住権のメリット

配偶者居住権は、単に「住み続けられる」という安心感を提供するだけではありません。
相続全体のバランスをとるためにも、有効な手段です。

 

配偶者の住まいを確保できる

配偶者居住権を利用するメリットは、住まいを失うリスクが防げる点です。
被相続人名義の住宅が相続財産に含まれる場合、遺産分割の対象となることで売却や明け渡しを求められる可能性がありますが、配偶者居住権を設定しておくことで、売却があったとしても居住する権利を主張することができます。

 

遺留分侵害のリスクを緩和できる

住宅を丸ごと配偶者に相続させると他の相続人の取り分が減る場合、遺留分侵害額請求を受ける可能性があります。
遺留分とは、相続人が最低限相続することができる遺産の割合であり、これが侵害された場合は、相当額を金銭によって支払うことになります。
一方、配偶者居住権を設定すれば、建物の価値が「居住権」と「所有権」に分かれて配分されるため、配偶者と他の相続人との間で相続財産を適切に分けることができます。
これにより、相続分の偏りが抑えられ、遺留分をめぐるトラブルのリスクを軽減できます。

 

配偶者居住権を設定する際の注意点

メリットの多い制度ではありますが、注意すべきポイントもいくつかあります。

 

不動産の利用に制限がある

配偶者居住権は住むことのみを目的とした権利です。
所有権がないため、売却・改築・賃貸などはできず、老朽化による修繕を行う場合も所有者と協議しなければならない場合があります。
また、配偶者が高齢者施設などに入居するため売却したいと考えた場合、不動産の所有権を持つ人は売却が可能ですが、実際には第三者が配偶者居住権が設定された物件に居住することはできません。
配偶者居住権は、あらかじめ存続期間を決めていればその期間が終わるまで続きますが、期間を定めていない場合は配偶者が亡くなるまで効力が維持されます。
つまり、配偶者が死亡するなどして配偶者居住権が消滅しない限り、物件の売却は難しいということになります。

 

所有権を持つ人の税負担が大きい

固定資産税は原則として不動産の所有権を持つ人に課されますが、改正相続法では、配偶者居住権を得た人が建物にかかる通常の維持費を負担することが定められています。
この維持費には固定資産税も含まれますが、対象となるのは「建物」に関する税だけです。
そのため、建物が建っている土地の固定資産税は不動産の所有者が支払うケースが多くなり、実際には使っていない土地の税金を負担することに不満を感じる可能性があります。

 

まとめ

配偶者居住権は、高齢の配偶者が安心して暮らし続けるための大切な権利です。
住まいを確保しつつ、他の相続人とのバランスも保ちやすく、相続税の節税にもつながる制度として注目されていますが、利用には法的な手続きや登記などの準備が必要であり、少なからずデメリットも存在するため、正しく理解しておく必要があります。
配偶者居住権の活用を考えている場合は、法務事務所などでの相談を検討してみてはいかがでしょうか。