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みなし相続財産とは?生命保険金などを受け取る際には注意が必要

相続で注意しなければならないことの一つに、「相続税」の問題があります。承継した財産の大きさに応じて課税がなされるため、節税を図るのであれば課税の観点からも相続人間における分配の方法に配慮をしなければなりません。

ただ、その前提として財産の把握が必要です。そこで、どのような財産が課税の対象となるのか、特にここでは「みなし相続財産」に関して言及していきます。予想外に金銭等が相続税の課税対象となる可能性がありますので、みなし相続財産とは何か、以下で把握していきましょう。

 

 

みなし相続財産とは

相続に関しては民法で基本的なルールが規定されています。そのため、民法に規定されている相続や遺贈などで取得した財産につき、相続税の課税対象として考えるのが原則です。

しかしながら、経済的効果や課税の観点から評価したとき、相続財産と同じように扱うのが公平であると考えられる類の金銭等があります。

これを「みなし相続財産」と呼びます。

民法上は相続財産とはならないものの、相続税法では相続財産として扱うもの、と言い換えることもできます。

 

相続財産として「みなす」理由

相続・遺贈から直接取得するものではないにもかかわらず、これを相続財産として「みなす」のには、納税者間の公平を図るという狙いがあります。

相続を直接の原因とする純粋な相続財産である場合にのみ課税がなされるのであれば、課税を免れるために、別の形で財産の取得をしようとする者が多く現れてきてしまいます。

本来大きな納税額が発生するところ、一般的に行われている節税対策の域を超え、これを一切なくすという事態も起こりかねません。

税法では、納税者間で大きな不公平が生じないようにするということが重要視されており、この場面でも事前に生命保険金等に形を変えた者が大きく得をしてしまうという事態を防ごうとしているのです。

 

みなし相続財産に該当するもの

みなし相続財産に該当するものの代表例は以下の通りです。

  • 生命保険金(死亡保険金)
  • 死亡退職金(死亡後3年以内に支給が確定したもの)
  • 定期金に関する権利
  • 特別縁故者に対する財産の分与
  • 特別寄与者に対する特別寄与料
  • 債務免除による利益

このうち特に問題となりやすい「生命保険金」について以下で詳しく見ていきましょう。

 

生命保険金には要注意

相続人が、被相続人が亡くなることによって生命保険金を受け取ったときには、この保険金がみなし相続財産となります。

原則通りに考えると、これは被相続人が持っていた財産ではないため一般的な相続財産にはあてはまりませんが、課税上はこれを相続財産としてみなす扱いを受けます。

ただし相続財産と同等の性質を持つ金銭であると評価されるには、被相続人が保険料を負担している必要があります。相続人が負担していたのであれば、元々相続人の財産であったものが生命保険の契約により返ってきたという形になるため、所得税の対象として捉えます。

また、相続人のみならずその他受遺者が受取人として設定されていることもあるでしょう。金銭の受取人が相続人以外の場合にも課税対象となりますので注意が必要です。

なお、課税の割合に関しては保険料の負担割合など、契約内容によって変わってきます。非課税枠が使える場合もあるため、税理士等に相談して細かく計算するようにしましょう。

 

みなし相続財産に該当しないもの

「直接の相続財産ではないが、被相続人が亡くなったことをきっかけに発生したもの」でありつつ、課税対象にならないものもあります。以下はみなし相続財産に該当しませんので混同しないようにしましょう。

  • 仏壇や墓地等(宗教的理由で礼拝に用いるもの)
  • 被相続人が亡くなるきっかけとなった交通事故等の加害者に対する損害賠償金
  • 相続財産のうち寄付をした分
  • 弔慰金などの一部

ただし、いずれのケースでも例外があるため要注意です。

例えば仏壇等であっても、骨董品としての大きな価値があるものに対しては課税される可能性があります。

損害賠償金も遺族から請求するのではなく、生前、請求をしており当人による受け取りが確定していたのであれば相続財産となります。

寄付金についても、寄付先の法人や事業内容等が要件とされています。

弔慰金などお悔やみに関する金銭についても限度があります。

 

みなし相続財産に対して遺留分の請求はできないのが原則

この記事で説明してきたみなし相続財産とは、あくまで相続税法上の話であり、純粋な相続財産とは区別されるものです。

そこで、みなし相続財産に該当する金銭等を受け取った者がいても、その金銭等に対して遺留分権利者が遺留分の請求を行うことはできません。

原則的には受取人固有の財産だからです。そこで亡くなった方の配偶者や子が、「受け取れる財産が少なくなってしまったから遺留分の請求をする」といったことはできないのが基本です。

ただ、「必ずしも遺留分の請求ができないわけではない」ことに留意すべきです。

上の判断はあくまで「相続人との間で生ずる不公平が、到底是認できず著しいものと評価されるべき特段の事情」がない場合での事例です。逆に、この事情が存在するのであれば特別受益にあたるとして持戻しの対象になるものと考えられます。

どこまでも生命保険金等が受取人固有の財産として保護されるわけではなく、あまりにその割合が大きく、配偶者や子などに渡る財産が極端に小さくなってしまったときなどには調整が入る余地があるということです。

 

相続に関する疑問はプロに相談を

相続に関連して様々な問題・トラブルが生じることがあります。

そこで、課税の問題については税理士に、その他遺留分や相続全般に関する疑問がある場合には弁護士に相談するようにしましょう。プロのアドバイスを受けることで、相続人やその他みなし相続財産を受け取った者との関係を良好に保ちつつ問題を解決していくことができるでしょう。