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任意後見を始める前に知っておきたいこと| 手続の流れ・費用・後見人の選び方について

判断力の低下について心配がある方は、任意後見制度の利用について検討してみてはいかがでしょうか。これは、まだ判断力が残っているうちに、信頼できる方に将来のサポートをお願いするための制度です。

ご利用を考える方に向けて、ここでは任意後見を始める前に知っておきたい①手続の流れ、②費用のこと、③後見人の選び方、の3つを紹介していきます。

 

 

任意後見開始までの手続の流れ

任意後見は、将来後見人になっていただく方との契約を基礎とする成年後見制度ですが、純粋に私的な手続ではありません。裁判所の関与も受けることとなります。

また、将来の法律行為についてサポートを頼むため、後見人には重大な権限が与えられます。そこで事前に法律家のアドバイスも受けておくことが望ましいです。

手続全体としては次のように進んでいきます。

  1. 法律家に相談する
  2. 任意後見受任者と契約をする
  3. 任意後見監督人を選任してもらう

各手順について詳しく説明します。

 

法律家に相談する

任意後見は法的な制度です。また、任意後見を始める目的も「法律行為の代理等の依頼」にあり、法律問題と密接に関わっています。

そこで任意後見を始めるにあたっては、法律家に相談をしておくことが望ましいです。後見について取り扱いの実績がある弁護士、司法書士などが相談先として挙げられます。将来に対する不安の内容を伝え、その内容に対して任意後見の利用が適しているのかどうかを聞いておきましょう。

手段として任意後見が適していることがわかれば、どのように始めるべきかについても聞いておきます。法定後見制度のように運用の枠組みが法律で決められておらず、頼みたいことを自ら契約内容に盛り込んでいかなくてはなりません。

どうやって契約に盛り込めば良いのか、そして契約書の作成についても法律家の助言を受けておくと安心です。

 

任意後見受任者と契約をする

任意後見を実際に始めるまでには「裁判所に申し立てをするまで」の段階と、「任意後見監督人が選任されるまで」の段階があります。
裁判所に申し立てをして任意後見監督人が選任されるまで後見が開始することはありませんので、当事者間の契約だけで後見は始められません。そして後見が始まると、契約の相手方は「任意後見人」となるのですが、それ以前の契約締結段階では「任意後見受任者」と呼ばれます。

まずはこの任意後見受任者となってくれる人を探しましょう。

親族を指定することが多いですが、任せる仕事内容によっては弁護士などの法律家が受任することもあります。

適任者が見つかれば「任意後見契約」を締結します。このときの契約で、後見人としてやってもらいたいこと、ルールなどを決めていきます。また、契約書は公正証書にしなくてはなりません。公証役場に連絡し、日程を調整。期日にて、公証人に公正証書を作成してもらいましょう。

 

任意後見監督人の選任を申し立てる

公正証書の作成ができれば、契約は完了です。しかし即座に契約の効力が生じるわけではなく、後見を始めるには家庭裁判所に「任意後見監督人」の選任を申し立てなくてはなりません。

任意後見監督人とは後見内容をチェックする人物のことで、この人物を介して裁判所による監督を受けることとなります。そのため任意後見人が勝手な行為をしているときは裁判所から指摘を受けます。

申し立てにあたっては公正証書の写し、戸籍謄本、などを準備して、申立書とともに提出します。

 

任意後見にかかる費用

任意後見を始める前の準備、そして開始手続、その後の運用の大きく3ステップで費用が必要になります。

法律家への相談・依頼費用 ・弁護士等への相談や依頼で必要になる費用。
・相談だけなら1時間1万円ほどが相場。契約内容の設計やその他依頼範囲が広がると数万円以上、20万円・30万円程度かかることもある。
・ただし料金体系は依頼先によって異なる。
契約書の作成費用 ・公正証書にするために手数料等の費用が発生する。
・公正証書作成手数料は11,000円。
・そのほか印紙税2,600円、登記手数料1,400円などが必要になる。
家庭裁判所への申し立て費用 ・任意後見監督人の選任について申し立てをするときに費用が発生する。
・申し立て手数料800円、登記手数料1,400円などが必要になる。
・裁判所から鑑定を求められたときは、鑑定費用(数万円~10万円前後)も発生する。

 

任意後見人の選び方

「未成年者」「破産者」「本人と訴訟トラブルを起こした者」「行方不明者」などを除き、基本的に誰でも任意後見人になることができます。家族や友人、弁護士や司法書士などの法律家、その他法人などもなることが可能です。

そのためどなたを選んでも一応有効に後見を始められるのですが、法律行為を代理するなど重大な役割を担う存在ですので、慎重に選定すべきといえます。

そこで次の点に着目して候補者を選ぶようにしましょう。

  • 経済力があること
  • 財産を管理する能力が十分にあること
  • 年齢が自分より低いこと

財産管理についても任せることになるため、やろうと思えば不正に財産を懐に入れることもできてしまいます。そのため信頼できる人物を選ぶことが大事なのですが、動機をなくす意味でも任意後見人には経済力があった方が良いといえます。

また、高齢の方を選ぶと認知症リスクなども高いことから、ご自身より年齢が低い方を選んだ方が安全です。