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負担付遺贈とは?遺言者にとってのメリットや作成時の注意点を解説

遺言書を使った財産の贈与を「遺贈」と呼び、そのうち何らかの義務を付したタイプを「負担付遺贈」と呼んでいます。
一般的な遺贈であればこれを受ける受遺者が一方的に財産をもらい受けることができますが、負担付贈与においては受遺者にも一定の役割が与えることができます。
当記事ではこの負担付遺贈について言及し、遺言者が知っておきたいことを解説していきます。

 

 

遺贈と負担付遺贈について

遺贈とは、遺言によって自分の財産を特定の人に無償で譲ることをいいます。相続とは異なり、法定相続人以外の人にも財産を残すことができます。

そして負担付遺贈とは遺贈の一種で、受遺者が財産を受け取ることに対し、一定の義務を負うことを条件とするものです。この義務を「負担」といい、例えばペットのお世話であったり建物の管理であったり、さまざまな行為を負担として定めるケースがあります。

 

負担付遺贈の利用シーン

負担付遺贈は、例えば次のようなシーンで利用することがあります。

 

残された家族の生活が心配な場合
ある財産を与えたい人物がいるものの、単純に遺贈をしたのでは遺言者の配偶者など家族の生活に心配が残るときは、負担付遺贈を行い受遺者に次のような義務を与えることが考えられる。

「●●を遺贈するが、妻●●が存命のうちは療養介護や生活に関する面倒をみること。」

ペットを対象としたお世話を条件にするケースもある。

第三者への寄付を継続してもらいたい場合
特定の団体に寄付を続けている場合、これを続けてもらうために、次のように負担付遺贈を利用することがある。

「遺贈する金●●万円を使って、●●への寄付を続けること。」

このように受遺者本人ではなく第三者が受益者となるケースもある。

住宅ローンが残った不動産を遺贈したい場合
まだローンが完済できていない不動産があり、これを譲りたいとき、次のように負担付遺贈を利用することがある。

「住宅ローンの残金を返済することを条件に、自宅を遺贈する。」

 

負担付遺贈を行うメリット

負担付遺贈のメリットは、遺言者最後のお願いを託せる点にあります。何ら義務を課さず遺贈しても良いですが、何か心配事がある場合や代わりにしてほしいことがある場合などで負担付遺贈とすればその目的を果たすことができます。

受遺者としても一方的に負担を与えられるわけではありませんので、もらい受ける財産との釣り合いが取れていれば快く引き受けてもらえるかもしれません。

遺贈を伴わず、遺言書にお願いだけを記載することも可能なのですが、この場合の遺言内容に法的な強制力ははたらきません。あくまでお願いをするだけに留まります。
この点、負担付遺贈においては記載通りの義務を履行しなければ相続人が家庭裁判所に請求するなどして履行を促すことができますので、より実効性が担保されます。

 

負担付遺贈を行う場合の注意点

負担付遺贈は遺言者の希望を実現するための有効な手段ですが、以下に挙げる点には注意してください。

 

負担の大きさへの配慮

負担付遺贈でも、無制限に義務を課せるわけではありません。「与える財産の価額の範囲内でのみ義務を課すことができる」という点に注意してください。このルールは法律でも明記されています。

 

負担付遺贈を受けた者は、遺贈の目的の価額を超えない限度においてのみ、負担した義務を履行する責任を負う。

引用:e-Gov法令検索 民法第1002条第1項

 

例えば金1,000万円の遺贈に対して1,500万円の金銭的負担を強いる義務を課しても、受遺者は1,000万円の限度でしか責任を負いません。

 

負担付遺贈の強制はできない

負担付であるかどうかにかかわらず、遺贈については受遺者が放棄できます。

 

受遺者は、遺言者の死亡後、いつでも、遺贈の放棄をすることができる。

引用:e-Gov法令検索 民法第986条第1項

 

そのため前項の通り、負担の重さを遺贈する財産の範囲内に収めたとしても、受遺者が納得しなければこれを受け入れてくれない可能性があります。

 

遺言執行者を指定しておく

遺言内容の実現を職務とする「遺言執行者」を遺言書にて定めることができます。

遺言執行者がいないと各相続人が遺贈義務者となって、遺言内容に係る実務を担うことになりますが、法律に対する知識がなかったり、大きな財産の取り扱いに不慣れであったりするとトラブルが起こるリスクが高まります。

そのためトラブルを回避し、スムーズに遺贈を実行するためにも、信頼できる執行者を指定しておくことが望ましいでしょう。遺言執行者は親族に限定されないため、法律に詳しい実務家、弁護士などに依頼するのも有効です。