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誰が相続人になれる? 相続人の具体的な範囲と法定相続分を左右する順位について

ある方が亡くなったとき、その亡くなった方(被相続人)との関係性が近い方が相続権を得ることになります。
この相続権を得る方が「相続人」です。相続人となれば遺産を取得することができるのですが、相続人になれるかどうかは民法の規定に従って考えなくてはなりません。どれだけ被相続人と親しい仲にあったとしても、相続人にならなければ(加えて、遺言書への記載等もなければ)、一切の遺産は取得できません。
そこで相続に関心を持ち、「誰が相続人になる?」「私は相続人になることができるのだろうか」と疑問をお持ちの方に向けて、この記事で相続人について解説をしていきます。

 

 

相続人になり得る範囲

実際に相続人になれるかどうかは別にして、可能性のある人物としては次の4つの立場にある人物が挙げられます。

  1. 被相続人の配偶者
  2. 被相続人の子またはその代襲者
  3. 被相続人の直系尊属
  4. 被相続人の兄弟姉妹またはその代襲者

上の通り、いずれも亡くなった方を基準に考えます。
4つの範囲につき、詳細を解説していきます。

 

配偶者について

まず「配偶者」についてですが、配偶者は他の3つの相続人と性質を異にします。

というのも、後述するように相続人となり得る立場にあったとしても、現実に起こった相続事案に関して実際に相続人になれるかどうかは別問題なのです。各立場に応じて“順位”というものが民法で定められていますので、順番が回ってこないと遺産を受け取ることができないのです。
他方で配偶者は“常に相続人となる”ことが法定されており、順位を気にする必要がありません。

(配偶者の相続権)
第八百九十条 被相続人の配偶者は、常に相続人となる。この場合において、第八百八十七条又は前条の規定により相続人となるべき者があるときは、その者と同順位とする。

引用:e-Gov法令検索 民法第890条

一緒に相続人となる方が誰であろうと、同じ順位で相続権を得ることができます。

ただし、「内縁の妻や夫」に関しては相続権を得ることができませんので要注意です。
優先順位が下がるわけでもなく、そもそも相続人となる権利が与えられていないのです。
法律上の婚姻関係がなければならず、実質配偶者と言える関係性であったとしても明確に区別されてしまいます。

 

子またはその代襲者について

被相続人の子も基本的に相続人となれます。

(子及びその代襲者等の相続権)
第八百八十七条 被相続人の子は、相続人となる。
2 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。
3 前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その代襲相続権を失った場合について準用する。

引用:e-Gov法令検索 民法第887条

民法第887条第1項に、子が相続人になる旨明記されています。
また第2項では、子がすでに亡くなっている場合には、さらにその子が代襲相続をすると法定されています。
被相続人が亡くなるより早く子が亡くなっているのであれば、その権利を被相続人の子が得るということです(これを「代襲相続」と呼ぶ)。
レアなケースではありますが、代襲者もすでに亡くなっている場合にはさらにその子(被相続人から見たひ孫)が代襲相続をすると同条第3項で法定されています(これを「再代襲相続」と呼ぶ)。

なお、「子」でありさえすれば良く、実子と養子の別は問われません。
養子縁組により子となった方も実子と同じように相続権を得ることができます。

※相続税の計算上、養子であることが影響することはある(基礎控除の計算に含めることができる人数制限など)。

さらに、「嫡出子」であるかどうかも関係ありません。
嫡出子とは“婚姻している夫婦間で生まれた子”のことを指し、逆に婚姻関係にない者の間で生まれた子は「非嫡出子」と呼ばれます。この非嫡出子であっても嫡出子と同じく相続権を得られます。

 

直系尊属について

直系尊属とは、被相続人の父や母、あるいは祖父・祖母などのことです。

ただしその全員が同時に相続人となるわけではありません。親等の近い者から順に相続権を得ることができますので、両親と祖父母をまとめて一緒に相続人にすることはできません。
両親のうち一方がすでに亡くなっている場合でも、父または母が生きているのであれば、祖父母が相続権を得ることはありません。

なお、直系尊属に関して注意が必要なのは、①実親と養親は同等に扱われる、②姻族は相続人の範囲に含まれない、の大きく2点です。
特別養子縁組ではなく一般的な普通養子縁組をしている場合、実親との関係性も絶たれていません。
そのためどちらも同じ直系尊属として共同して相続人になるケースがあります。
姻族とは配偶者側の親族、例えば義母や義父などのことであり、これらの人物は相続権を得ることはできません。

 

兄弟姉妹またはその代襲者について

被相続人の兄・弟・姉・妹はいずれも同等に相続人となる可能性があります。兄弟姉妹の間で優劣はありません。

また、被相続人の親の実子なのか養子なのか(半血・全血の別)も関係ありません。

また、被相続人の子のときと同じく、代襲相続の可能性があります。兄弟姉妹が相続人になれる事案において、その人物がすでに亡くなっているのなら、その子が代襲者となり相続権を得ます。
しかしながら被相続人の子が代襲者となる場合と異なり、再代襲は起こりません。

さらに、兄弟姉妹の場合には「遺留分」も認められていない点留意すべきです。遺留分とは生活保障の観点から最低限確保される相続分のことであり、被相続人の配偶者・子・直系尊属などには認められているのですが、兄弟姉妹には認められていません。

 

相続人になれるかどうかは「順位」により定まる

配偶者に関しては常に相続人になれることを示しました。
その他の人物、とりわけ被相続人の直系尊属・兄弟姉妹に関しては優先順位が低く法定されており、上の順位に位置する者が相続権を得るシチュエーションにおいては相続人になることはできません。

そしてその順位は次の通りに定められています。

 

  • 第1順位:子またはその代襲者
  • 第2順位:直系尊属
  • 第3順位:兄弟姉妹またはその代襲者

 

つまり、子がいる場合には被相続人の親や兄弟姉妹は相続人になれません。仮に子がいなかったとしても、孫がいる場合には代襲相続が優先され、同様に第2順位・第3順位の者らは相続人になりません。

子やその代襲者がいなければ直系尊属が相続人になれます。
そのため、兄弟姉妹が相続人になれるのは、被相続人の親や祖父母などがすでに亡くなっている場合に限られます。

 

「順位」は法定相続分にも影響する

子、あるいは親や兄弟姉妹が相続人になったとしても、同じように相続をできるとは限りません。
法定相続分(法律上定められている遺産の取得割合)が順位により異なるからです。

法定相続分は、遺言書での相続分の指定がない場合などに遺産分割の基準となるものです。相続人間の同意に基づき法定相続分と異なる割合で遺産を取得しても違法ではありませんが、ある種遺産取得の相場として機能しますので、その意味で重要な指標となります。

当然、順位が上になるほど取得分も優先されます。

例えば配偶者と子が相続人である場合には、法定相続分は1/2ずつとなります。子が複数人いる場合には1/2をさらに分けることになりますので、配偶者が最も優先的に遺産を取得できるということになります。
配偶者および直系尊属が相続人になるときには、配偶者が2/3、直系尊属が1/3の割合となります。
直系尊属が複数いる場合には子のときと同じく1/3の遺産をさらに分割することになります。
配偶者および兄弟姉妹が相続人になるときには、配偶者が3/4、兄弟姉妹が1/4の割合となります。
兄弟姉妹が複数いる場合もやはり1/4を分割することになり、兄弟姉妹1人あたりの取得割合は相当に小さくなります。