亡くなった方の財産は基本的に相続人が取得します。しかしその相続人がいないときは一定の手続きを経て国の財産となってしまいますので、お世話になった方など特定の方に財産を渡したいと思うときは遺言書を作成しましょう。
以下でも、相続人がいない方に関する相続とその後の財産について解説していきますので参考にしていただければと思います。
亡くなった方の夫・妻、子、孫、親、祖父母、兄弟姉妹、甥・姪がいるとき、これらの人物は法定の順位に従い相続人になることができます。しかしこれらの人物が一切存在していないときや相続放棄をしてしまっていると遺産を受け取る方がいなくなってしまいます。
相続人がいないときの遺産の取り扱いについても法律で定められており、誰も受け取る方がいなければ最終的に国のものになることが決まっています。
被相続人に相続人がいないような場合は、次のような手続きを行います。
被相続人に対して債権を持っていた方は遺産から債権を回収することができます。また、遺言書が作成されておりそこで財産の受取人となっている受遺者がいるときもその方が受け取れます。
もしこれらの人物がいないときでも、上の③にあるように「特別縁故者」であれば財産を受け取れる可能性があります。特別縁故者とは次のいずれかに該当する方をいいます。
つまり相続人がいなくても特別縁故者にあたる方なら遺産を受け取れる可能性はあるということです。しかしながら、特別縁故者として認められるかどうかは不確かな要素も多く、さらにその方が裁判所で手続きを行わなければいけません。
そこで、特別縁故者にあたりそうな方やその他の方に確実に遺産を渡したいのであればやはり遺言書を作成しておく必要があります。
相続人になれる方は法律により決められていますので、被相続人の意思であっても自由にその範囲を広げることはできません。
一方で、遺言書を使えば相続人にならなくても特手の人物に遺産を渡すことは可能です。そのため、もし誰か遺産を渡したい方がいるのなら遺言書を使いましょう。相続人がいるときでも遺言書があるときは受遺者に受け取ってもらうことができますし、相続人を受取人として特定の資産を受け継いでもらうこともできます。
遺言書を上手く使えば、思い通りに遺産の行方を定めることができます。
しかし、この便利な遺言書でも作成するときにはいくつか注意すべき点があります。
まず1つは「法律の規定に従って適切な形式で作成を行うこと」です。民法では次のように規定されていて、自筆証書・公正証書・秘密証書のいずれに関しても作成ルールが規律されています。
遺言は、自筆証書、公正証書又は秘密証書によってしなければならない。
所定のルールが守られていないと遺言書が無効になってしまうためご注意ください。
もう1つは「遺留分に配慮して各自の取得分を考えること」です。遺言書を使って好きなように遺産を分け与えることもできますが、亡くなった方の配偶者や子、親などについては遺留分と呼ばれる最低限の取り分が認められています。極端に相続分が少なくなると受遺者が後で遺留分の請求を受ける可能性があります。
最後に「遺言書の安全な保管方法を考えること」にも注意しましょう。公正証書として作成したときは公証役場で保管してもらえますので気にする必要はありませんが、自筆証書・秘密証書の場合は遺言者自身で保管しないといけません。自筆証書に関しては法務局の保管制度を活用すれば安心ですが、そうでない場合は紛失や改ざんの危険にさらされてしまいます。