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相続人廃除の要件と遺言書で手続きを行う流れ

自分の死後、自身の財産は相続人に受け継がれます。
いさかいがあった相手に財産を渡したくないと考えていても、相手が配偶者や直系の親族の場合、法律により相続できる権利が認められています。
この記事では、相続権を失わせるための要件や、遺言書による手続きの流れを解説します。

 

 

相続人廃除

相続人廃除とは、自分の死後に自身の財産を受け継ぐことになる推定相続人の相続権を失わせる手続きです。
この手続きは、遺留分が認められている方に対してのみ行えます。
遺留分とは、相続人に認められた最低限の相続できる割合です。
配偶者や直系尊属(両親や祖父母)、直系卑属(子や孫)には遺留分が認められています。
ただし自身の兄弟姉妹には遺留分が認められていないため、兄弟姉妹に対して廃除の手続きは行えません。

相続人廃除が決定すると、その相続人は被相続人の財産を一切相続できなくなり、遺留分も認められなくなります。
ただし廃除した人に子どもがいる場合には、その子どもが代わりに遺産を相続します。

 

相続人廃除の方法

相続人廃除は家庭裁判所へ申し立てを行い、審判を受けて決定します。
申し立ては被相続人本人が生前に自ら行う方法と、被相続人の死後に遺言書によって行う方法があります。
遺言書によって行う場合には遺言執行者を選任し、遺言執行者に申し立てを行ってもらわなければいけません。

 

相続人廃除の要件

廃除が認められる要件として、推定相続人が次のような行為を行っている必要があります。

  • 被相続人に対する虐待
  • 被相続人に対する重大な侮辱
  • 推定相続人の著しい非行

虐待とは、物理的・精神的に耐えがたい苦痛を与えることです。
侮辱とは相手の社会的評価や名誉、感情を著しく侵害する行為を指します。
被相続人の財産を勝手に使用した場合には、非行に該当する可能性があります。
そのほか、被相続人以外に対して行った犯罪行為なども要件として認められます。

 

相続人廃除は必ず認められるわけではない

相続人廃除は必ず認められるわけではありません。
家庭裁判所は判断を慎重に行うことが多く、実際に認められたケースは20%ほどです。
そのため申し立てを行う際には、客観的に見て「相続人廃除が妥当である」と認められる証拠を用意することが重要です。

 

遺言書で相続人廃除を行う流れ

遺言書によって相続人廃除を行う場合、まずはその旨を記載した遺言書を作成する必要があります。
自身の死後、遺言執行者は家庭裁判所へ廃除の申し立てを行い、家庭裁判所の審判を受けます。
廃除が認められた場合には、10日以内に役所へ届け出を行わなければいけません。

 

遺言書の記載方法

遺言書には廃除の旨と、相手の名前やその理由を記載します。
廃除の要件を満たす行為について具体的に記載してください。
同時に、廃除が適切であると裏付けられる証拠も用意しておくと審判の際に役立ちます。

またスムーズに排除の申し立てを行うには、遺言執行者を指定しておく必要があります。
遺言執行者には親族を指定することも可能ですが、裁判の手続きが発生するため、専門的な知識のある弁護士などを指定しておくと安心です。
生前から弁護士へ相談しておくことでスムーズに手続きできるだけでなく、要件に適した証拠を集めることが可能です。

 

家庭裁判所への申し立て

被相続人が亡くなったあと、遺言執行者は次の書類を用意し、家庭裁判所へ廃除の申し立てを行います。

  • 相続廃除申立書
  • 被相続人の戸籍謄本
  • 廃除したい方の戸籍謄本
  • 遺言書の写し(検認が必要な場合は検認調書謄本の写し)
  • 執行者選任の審判書謄本(家庭裁判所で選任された執行者が申し立てる場合)

申し立ての際には手数料として800円の収入印紙が必要です。
また、裁判所からの書類送付のため、郵送料がかかる可能性があります。
申し立て後、遺言執行者と廃除対象の相続人は、それぞれが証拠などをもとに主張や立証を行います。
家庭裁判所はそれを受け、廃除についての判断を下します。

 

廃除が認められた場合

廃除が認められた場合、廃除が確定した日から10日以内に届け出なければいけません。
届け出は被相続人の戸籍がある市町村役場に対して行い、次の書類を提出します。

  • 推定相続人廃除届
  • 家庭裁判所による審判書の謄本
  • 審判の確定証明書

届け出を行うことにより、推定相続人の戸籍の身分事項欄に廃除の旨が記載され、手続きが完了します。
この届け出に費用はかかりません。

 

まとめ

この記事では、相続人廃除の概要と手続きの流れを解説しました。
相続人廃除は、遺留分が認められるほど近い関係にある相続人に対してのみ行えます。
ただし、虐待や侮辱、非行といった要件を満たさなければいけません。
相続人廃除は簡単に認められるものではなく、客観的に見ても廃除が適切だと思えるような証拠が必要です。
相続人廃除を検討している方は、お早めに弁護士までご相談ください。