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認知症の人が作成した遺言書は有効か?

政府調査で65歳以上の高齢者のうち3人に1人が認知機能に関わる症状があるとされる現代社会で、認知症でも遺言書を作れるのか不安を抱く声が多く寄せられています。
相続トラブルを防ぐためにも、正確な知識を身につけ、適切な対策を行うことが大切です。
本記事では、認知症の人が作成した遺言書が有効か、遺言書の有効性を維持するための対策を紹介します。

 

 

認知症の人が作成した遺言書は有効?

認知症の人が作成した遺言書の有効性は、遺言能力の有無によって判断されます。
そのため「認知症=遺言書が無効になる」とはなりませんが、民法の定める基準を満たしていないと遺言書が適用されなくなる可能性があるため注意が必要です。

 

遺言能力とは

民法では、遺言能力について次のように明記しています。

  • 15歳に達した者
  • 遺言者が遺言をするときにその能力を有している

つまり、15歳以上で遺言書の内容を理解・判断できるだけの意思能力があれば、誰でも遺言書を作成することが可能です。
認知症といっても、前兆の軽度認知障害から末期の重度まで進行段階は複数あるため、すべての認知症患者が遺言能力を持っていないとは断言できません。
また、認知症でなくてもほかの病気の影響で遺言内容を理解できずに意思能力が不十分とされる状態では、遺言書の有効性が疑われる可能性があるため注意が必要です。

 

認知症の人が作成した遺言書の有効性を判断するポイント

認知症の人が作成した遺言書が有効か否かは、医師の診断結果だけで一律に判断されるものではありません。
大切な財産を適切な形で残すためにも、有効性を判断するポイントを紹介します。

 

①遺言者の意思能力

認知症の人が作成した遺言書の有効性を判断する際、とくに重視されるのが遺言者の意思能力があるかどうかです。
意思能力とは、遺言書に記載されている財産の種類や量、相続先、相続割合を理解できているのか、そしてその結果を判断できる状態でなければなりません。
認知症と診断されていても、前兆〜軽度の進行段階で遺言書の内容をしっかりと理解できることを証明できれば、遺言が認められる可能性があります。

 

②遺言内容の合理性

遺言書の有効性を争う際、遺言内容が自然で合理的であるかどうかも確認されます。
そもそも遺言は、本人の意思に基づく内容になっている必要があり、客観的に本人の意思に反する疑いがあれば、有効性の判断基準にも影響します。
たとえば、長期的に介護や身の回りの世話をしていた子どもに対して、ほかの相続人よりも多くの財産を残したいと遺言した場合、その内容は認められやすいでしょう。
一方、ほぼ絶縁状態のような関係性の親族にすべての財産を渡したいと遺言した場合、本人の意思が反映されているかどうか疑われることがあります。
関係性が悪いからといって、直ちに有効性が失われるわけではありませんが、遺言内容の合理性も考慮される点は、把握しておきましょう。

 

③遺言作成時の状況

遺言者が認知症になっている場合でも、遺言書を作成した時点で遺言内容を理解し、自分の意思で遺言内容を決めていたのであれば、有効性が認められる可能性があります。
認知症は、気付かぬうちに急速に進行したり、時間帯や体調によって判断能力にムラが出ることもあるため、後から意思能力を証明することが難しいケースも少なくありません。
遺言書の有効性で争うことになる場合、作成した時期の診断書や介護記録、家族とのやりとりが判断材料になります。

 

今からできる認知症の遺言書対策

遺言者が認知症になると、相続トラブルに発展するおそれが高まることがあります。
大切な財産を適切な形で残すためにも、今からできる対策を紹介します。

 

健康なときに遺言書を作成する

認知症による遺言書トラブルを未然に防ぐためには、意思能力が低下する前に遺言を残すことが重要です。
遺言書は高齢になってから作成するものだと認識している方も多くいますが、実際にはいつでも作成できます。
「特定の相続人に多くの財産を残したい」「法定相続とは異なる形で財産を分配したい」といった希望がある場合、遺言者が健康なうちに遺言書を作成するようにしてください。

 

公正証書遺言や遺言執行者を活用する

公正証書遺言とは、遺言者が2名以上の証人の立会いのもと、遺言内容を口述し、公証人がその内容を公正証書として作成する遺言方法です。
原本が公証役場に保管されるため、自筆証書遺言と比べて紛失や隠蔽、偽造、形式不備のリスクが低く、遺言者の意思が尊重されやすくなります。
また、民法第1012条で認められた相続財産の管理や遺言執行に必要な行為を行う権利義務を有する遺言執行者を指定することで、遺言者の意思が反映されやすくなります。

 

遺言作成時の状況を証拠で残す

遺言書を作成した際には、意思能力があったことを証明する診断書や介護記録を残すことで、認知症が進行しても有効性を証明しやすくなります。
また、遺言者が財産を多く渡したいと考える理由も記録しておくことで、相続トラブルが発生するリスクを最小限に抑えられます。

 

まとめ

遺言者が認知症になっても、遺言書を作成した時点で意思能力が十分にあれば、その内容は認められる可能性があります。
ただし、有効性を巡る争いに発展した場合、意思能力を証明する必要があるため、公正証書遺言や遺言執行者を活用したり、健康状態を記録した書類を残したりすることが重要です。
認知症になったご家族の相続や遺言書に関する疑問や不安がございましたら、早い段階で専門家へご相談ください。