遺言書とエンディングノートは、どちらも死後に備えて作成する重要な文書です。家族など身近な方に思いを伝えたり、遺産分割についての意思表示をしたりするため、終活の一環で作られます。
似た役割を持つこの2つの文書ですが、記載する内容や法的効力には大きな違いがあります。具体的にどのような違いがあるのか、また、両方作っておく必要はあるのか、という点について当記事でご説明いたします。
「エンディングノート」とは、自らの意思や家族などに伝えたい情報を書き留めておくノートのことをいいます。
厳密な定義はなく、作成にあたっての細かなルールなどもありません。財産のこと、葬儀のこと、お墓のことなど、伝えたいことを自由な形式でノートに記したものを広くエンディングノートと呼びます。
「遺言書」は、家族などに伝えたい情報・意思を記した文書であって、法律上の要件を満たしたものをいいます。
法律上の要件を満たすことで遺言内容には法的拘束力が生じ、例えば遺産分割の方法や遺贈についての指定を行うことができます。適式に作成された遺言書であれば、財産の取り扱いに関して、一部の相続人が反対をしても遺言通りに実行することが認められます。
また、相続人の廃除や認知に関すること、祭祀承継者の指定から遺言執行者(遺言内容の実現を職務とする人物)の指定なども遺言書を使って行うことができます。
遺言書とエンディングノートは共通点が多いです。どちらも作成者自身が亡くなったその後について、家族などに伝えたいことをまとめた文書です。
ただし「法的効力の有無」という点で大きな差がありますし、作成方法についても差異があります。
簡単に両者の違いを整理したのが下表です。
遺言書 | エンディングノート | |
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目的 | 遺産の分配や相続に関する希望を明確に伝えること | 自分の思いや希望、個人的な情報を家族や親しい人に伝えること |
法的効力 | 法律に基づいて作成され、法的な拘束力を持つ | 法的な拘束力はなく、あくまで希望を伝えるためのもの |
記載内容 | 財産の分配方法、相続人の指定、遺言執行者の指定など | 医療や介護に関する希望、葬儀や埋葬に関する希望、家族へのメッセージ、ペットのお世話に関することなど |
形式 | 自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3つの形式があり、それぞれに厳格なルールがある | 自由な形式で作成できる |
遺言書とエンディングノートの両方を作成してもかまいません。争いの起こりやすい遺産分割に関することなどは遺言書に記載し、その他伝えたいこと・知ってほしいことなどはエンディングノートに記載する、といった使い分けをするのも良いかもしれません。
なお、遺言書とエンディングノートは似た役割を持ちますので、内容が被ることもあるでしょう。それが遺産分割に関することなどであれば、正しく作成された遺言書の内容が優先されることとなります。
※エンディングノートのつもりで作成したものでも、遺言書としての要件(全文の自書や日付の記載、押印など)を満たせば遺言書として法的拘束力を持つ。
そこで混乱を避けるためにも、遺言書を作成するときはエンディングノートに同じ内容(遺産分割や遺贈のことなど)を記載することは避けましょう。用途、目的に応じて適切に使い分けることが大事です。
遺言書の作成、エンディングノートの作成は、終活として大事な取り組みの1つです。他にもいくつか大事なことを紹介します。
財産整理 | 預貯金・不動産・有価証券などを把握。借金やローンの整理も行い、これらをリストアップしておく。これによって相続手続もスムーズになり、相続人の負担が軽くなる。 |
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葬儀・お墓の準備 | 葬儀の形式や規模、墓地・墓石、納骨堂の検討をしておく。遺族の負担軽減につながり、また、自分自身の希望を叶えるためにも重要。 |
デジタル情報の整理 | SNSアカウントやオンラインサービスに関する情報を整理しておく。特にサブスク契約をしているサービスに関しては死後も引き落としが続いてしまうなど問題になりやすいため明記しておく。 |
任意後見契約 | 判断能力が低下した場合に備え、信頼できる人に財産管理や身上監護を任せる契約を交わしておく。判断能力があるうちに始めないと有効に契約を交わすことができない。 |
老後資金計画 | 年金や退職金、預貯金など、老後の生活に必要な資金を把握し、計画を立てておく。安心して老後を過ごすため、また、家族への経済的負担にも関わることから重要。 |
わからないこと、不安なことがあるときは専門家も積極的に活用しましょう。特に遺言書のことや財産、相続に関することは弁護士へご相談ください。