遺言は、「公正証書遺言」「自筆証書遺言」「秘密証書遺言」の3つから選んで行うことができます。このうち公正証書遺言は自筆証書遺言に次いでよく利用される種類ですが、本人だけで作成することができず、公正証書として作成するのに費用や必要書類を用意しなければなりません。
ここで、公正証書遺言を作成するために必要な費用、そして準備物について解説をしていきます。
自筆証書遺言と違って公正証書遺言の作成で手数料が発生するのは、作成手順に大きな違いがあるからです。
公正証書遺言では、公証人に証人2人を加えて作成を進めていきます。本人が遺言内容を口頭で伝え、公証人がその内容をまとめ、その文章を本人と証人に読み聞かせ・閲覧させます。そうして間違いがないことを厳重にチェックしてから公正証書として作成されます。
公証役場という機関を利用し、多くの人の関与を受けて作成されていくため、その分手数料を納める必要があるのです。
自筆証書遺言や秘密証書遺言と比較した場合、「無効になるリスクが小さい」「検認手続が必要ない」「保管上のリスクが小さい」といった違いが挙げられます。
無効になるリスクに関して、公証人によるチェック、証人が内容を確認することで法律的な不備を防ぎやすくなっています。
検認手続は家庭裁判所で行われそれ以降の遺言書の改ざん等を防ぐ役割を持つのですが、公証役場で管理されている公正証書遺言に関しては行う必要性がないのです(自筆証書遺言の場合でも遺言書保管制度を利用しているのなら検認手続不要)。
同様に、原本が公証役場で保管されることにより保管上のリスクを下げることができます。本人が保管するとなればいつか紛失してしまう可能性がありますし、誰かに改ざんされてしまうおそれもあります。
公正証書遺言の作成にあたっては、政令で定められた手数料が必須です。また本人が望む効果を遺言書で実現するには弁護士への相談もポイントとなってきますので、弁護士費用も必要になると考えておくと良いでしょう。
作成費用については「公証人手数料令」という政令で規律されています。
この政令では、「遺言の目的である財産の価額」を基準に手数料が定まると規定されています。
目的価額と手数料は下表のように対応します。
財産の価額 | 手数料 | 遺言加算 |
---|---|---|
~100万円 | 5,000円 | 11,000円 |
~200万円 | 7,000円 | 11,000円 |
~500万円 | 11,000円 | 11,000円 |
~1,000万円 | 17,000円 | 11,000円 |
~3,000万円 | 23,000円 | 11,000円 |
~5,000万円 | 29,000円 | 11,000円 |
~1億円 | 43,000円 | 11,000円 |
~3億円 | 43,000円+(超過額5,000万円ごとに)13,000円 | ― |
~10億円 | 95,000円+(超過額5,000万円ごとに)11,000円 | ― |
10億円超 | 24万9,000円+(超過額5,000万円ごとに)8,000円 | ― |
また表の右部にあるように、財産が1億円以下の場合には手数料に遺言加算の分が加わります。
さらに、原本・正本・謄本をそれぞれ作成します。原本は公証役場で保管されますが、正本と謄本を遺言者本人に交付されるため、1枚につき250円の手数料も必要になります。
原本に関しても4枚を超える場合は、超過した枚数に応じて250円の手数料が加算されます。
その他以下の点にも留意しなければなりません。
弁護士の利用は必須ではありませんが、法律に精通したプロでなければ作成に関する相談・依頼をしておくことが望ましいです。遺言は法律に則り行わなければ無効になってしまいますし、公証役場での作成により不備は防げても法的観点から最適な遺言内容を考える上では弁護士のサポートが欠かせません。
弁護士費用としては相談料や作成費用が主となるでしょう。具体的な金額は法律事務所によって異なりますので要確認です。
手数料だけを持っていけばすぐに作成ができるというものではありません。以下の資料を備えてから公証人との打ち合わせを進めるようにしましょう。
その他、事案に応じてここに記載されているもの以外も求められることがあります。公証役場か弁護士に相談しておいて、必要書類を確認しておくと良いでしょう。